「心は男」「女性刑務所に入るくらいなら死刑に」 性同一性障害の県内被告、「死ぬほど苦痛」涙の訴え

「女性刑務所に入るくらいなら即、死刑にしてほしかった」。窃盗の罪で服役することになった県内の20代被告が、拘置施設の面会室で悲痛な声を響かせた。頬には涙の跡が幾筋も光る。髪は肩まで伸びているが、声は低く、一見した限りでは性別が分からない。被告には、体は女性だが心は男性という性同一性障害がある。控訴審判決が出た直後の今月21日、金沢刑務所拘置区(金沢市)で面会し、現在の心境などを聞いた。 (社会部・中島慎吾)

 被告は6月、県西部の商業施設で食料品などを盗んだ疑いで逮捕、起訴された。執行猶予期間中の犯行だったこともあり、一審富山地裁高岡支部で懲役1年の判決を受けた。猶予されていた刑期を合わせると3年4カ月ほどになる。

 性別を変更するため、かねてから適合手術を望んでいたが、経済的な理由で受けられずにいた。性同一性障害の専用刑務所はなく、このままでは戸籍上の性別に従って女性刑務所に入ることになる。それを避けるには実刑から逃れるしかない。執行猶予付き判決を求め、名古屋高裁金沢支部に控訴した。

 しかし、面会直前の判決で一審の判断が変わることはなかった。「社会内での更生の道を自ら閉ざした。障害を酌むとしても限界がある」。安易に犯行を繰り返したと断じる裁判長の言葉が法廷に重く響く。「これ以上どうしようもない」。風船から空気が抜けるように闘争心を失った被告は、この日のうちに上告する権利の放棄を申し出たという。放棄が確定すれば受刑者として服役することになる。

 自らが犯した罪に対し懲役刑を受けることはやむを得ない。だが、女性として服役を強いられるのは「二重の刑罰」だと感じている。男性の外見を保つためのホルモン投与も逮捕後は受けられず、女性に近づいていく自らの容姿に強い嫌悪感を抱くようになった。「自殺したい」との思いも頭をよぎる。

 一方で、それに打ち勝ち、罪を償って出所できたなら、同じ境遇の人を支えたいとの願望もある。「もう誰にも同じ思いをしてほしくない。刑務所で体の自由が制限されても、性別の自由は奪われないよう、世の中を変えたい」

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